適正使用ガイド
Q2 骨折を予防するために、ゾーフィゴ投与時に骨修飾薬の併用は有用か?
骨転移のある去勢抵抗性前立腺癌(CRPC)患者に対しゾーフィゴを投与する際、骨修飾薬*を併用することは骨折の予防に有用と考えられます。本剤を投与される際は、骨折のリスクについて十分な検討を行い、骨折リスクのある患者に対しては可能な限り骨折の予防のために骨修飾薬を併用いただきますようお願いします注)。また、患者に骨折を予防するための生活上の注意などを促すこともご検討ください。
* : ビスホスホネート系薬剤、ヒト型抗RANKLモノクローナル抗体製剤
注) 骨修飾薬を投与する際は、これら薬剤の適正使用方法を最新の添付文書でご確認ください。
【解説】
化学療法未治療で無症候性又は軽度症候性の骨転移のあるCRPC患者を対象とし、アビラテロン酢酸エステル(以下、アビラテロン)及びプレドニゾン(国内未承認)/プレドニゾロンにゾーフィゴ又はプラセボを併用した際の有効性及び安全性評価を目的としたランダム化二重盲検プラセボ対照国際共同第Ⅲ相試験(ERA223試験)において、ゾーフィゴ併用群ではプラセボ併用群と比較して骨折の発現率が高い傾向が認められましたが、骨修飾薬併用有無別の事後解析より、ゾーフィゴ併用群における骨折(表1)1および症候性の病的骨折(表2)2の発現率は、骨修飾薬を併用していなかった患者と比較して併用していた患者で低い傾向が認められました2。
表1. ERA223試験における骨折の発現状況および骨折と骨修飾薬(BMA)の関係(事後解析)1
ゾーフィゴおよびアビラテロン+Pred | プラセボおよびアビラテロン+Pred | |||
---|---|---|---|---|
BMA併用(n=157) | BMA非併用(n=235) | BMA併用(n=169) | BMA非併用(n=225) | |
1箇所以上の骨折の発現 | 24 (15%) | 88 (37%) | 11 (7%) | 34 (15%) |
Pred : プレドニゾン(国内未承認)またはプレドニゾロン
表2. ERA223試験における症候性骨関連事象無発症生存期間(SSE-FS)のカテゴリ別イベントの発現状況:BMAの併用有無別(事後解析)2
SSE-FSにおけるカテゴリ | ゾーフィゴおよびアビラテロン+Pred | プラセボおよびアビラテロン+Pred | ||
---|---|---|---|---|
BMA併用(n=155) | BMA非併用(n=246) | BMA併用(n=169) | BMA非併用(n=236) | |
いずれかのイベント | 62 (40.0%) | 122 (49.6%) | 71 (42.0%) | 98 (41.5%) |
死亡 | 53 (34.2%) | 86 (35.0%) | 48 (28.4%) | 63 (26.7%) |
外部照射 | 25 (16.1%) | 65 (26.4%) | 32 (18.9%) | 52 (22.0%) |
脊髄圧迫 | 6 (3.9%) | 5 (2.0%) | 5 (3.0%) | 14 (5.9%) |
症候性の病的骨折 | 2 (1.3%) | 37 (15.0%) | 4 (2.4%) | 11 (4.7%) |
腫瘍に起因する整形外科的介入 | 1 (0.6%) | 9 (3.7%) | 2 (1.2%) | 4 (1.7%) |
ランダム化二重盲検プラセボ対照海外第Ⅲ相試験(ALSYMPCA試験)において、症候性骨関連事象(SSE)に関連する因子を多変量解析(事後解析)により検討した結果、ビスホスホネート系薬剤の併用はSSE発現までの期間延長に寄与する独立因子でした(ベースライン時におけるビスホスホネート系薬剤の併用 ありvs.なし:ハザード比0.49 (95%CI:0.38-0.64), p<0.001)3。
無症候性又は軽度症候性の骨転移のあるCRPC患者を対象とし、エンザルタミドとゾーフィゴの併用治療時の有効性及び安全性を検討する医師主導のランダム化比較非盲検海外第Ⅲ相試験(EORTC-1333-GUCG試験、目標症例数560例)が現在進行中です。独立データモニタリング委員会による第4回目安全性評価(2019年5月20日時点、160例)では、BMA併用有無別の骨折の発現状況が報告されました(表1)4。BMA非併用患者では、エンザルタミド単剤群と比較して併用群で骨折の累積発現率が高い傾向が認められましたが、BMAを併用することにより、1年時点の骨折の累積発現率は両群ともに0に抑制されました。
表1. EORTC-1333-GUCG試験におけるBMA併用有無別の骨折の累積発現率(2019年5月20日時点)4
骨折の累積発現率(95%CI),% | ||||
---|---|---|---|---|
BMA併用 | BMA非併用 | |||
時点 | エンザルタミド+ゾーフィゴ(n=39)* | エンザルタミド(n=49) | エンザルタミド+ゾーフィゴ(n=37) | エンザルタミド(n=35) |
3ヵ月 | 0 ( - ) | 0 ( - ) | 0 ( - ) | 5.7 (1.0-16.7) |
6ヵ月 | 0 ( - ) | 0 ( - ) | 5.6 (1.0-16.3) | 8.8 (2.2-21.0) |
9ヵ月 | 0 ( - ) | 0 ( - ) | 22.6 (10.6-37.3) | 8.8 (2.2-21.0) |
12ヵ月 | 0 ( - ) | 0 ( - ) | 37.4 (21.8-53.1) | 12.4 (3.9-26.2) |
15ヵ月 | 0 ( - ) | 0 ( - ) | 43.6 (26.8-59.3) | 16.6 (5.9-32.0) |
18ヵ月 | 0 ( - ) | 0 ( - ) | 43.6 (26.8-59.3) | 16.6 (5.9-32.0) |
* 27ヵ月目に骨折が1例発現した
結果の解釈においては、症例数が限定的、観察期間が短い、事前に規定された中間解析および部分集団解析ではない、集団間で患者背景や観察期間に偏りが存在する可能性、確定的なデータではない点などに留意が必要です。
前立腺癌患者への長期間のホルモン療法は骨密度を減少させ骨折のリスクを増加させることが知られており5,6,7、骨転移のあるCRPC患者では、骨折のリスクが高い状態にあると考えられます。骨折のリスクを減らすための安全対策に関する教育は患者の機能やQOLを維持する上で重要であり、患者に骨折を予防するための生活上の注意(転倒を防止する、骨に無理な荷重をかけない、痛みの増強やこれまでと異なる痛みが出現した場合には主治医に相談する、安全な生活環境の確保など)を促すこともご考慮下さい8。
骨転移のあるCRPC患者への骨修飾薬の投与により骨関連事象が減少することは大規模第III相試験において証明されており9,10,11、国内外の前立腺癌や骨転移に関する各種ガイドラインにおいて、骨修飾薬の投与が推奨されています(2018年10月時点)。
<国内のガイドライン>
- 日本泌尿器科学会編集 前立腺癌診療ガイドライン2016年版
- 日本臨床腫瘍学会編集 骨転移診療ガイドライン 2015年版
<海外のガイドライン>
- European Association of Urology (EAU), Guideline for Prostate Cancer, 2018
- National Comprehensive Cancer Network (NCCN), Guidelines for Prostate Cancer, 2018
BMA : bone modifying agents
CRPC : castration resistant prostate cancer
SSE : symptomatic skeletal events
SSE-FS : symptomatic skeletal event-free survival
- Smith, et al., Lancet Oncol. 2019;20(3):408-19.
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S147020451830860X?via%3Dihub Return to content - PRAC, Assessment Report, 17 July 2018
https://www.ema.europa.eu/documents/referral/xofigo-article-20-procedure-prac-assessment-report_en.pdf Return to content - Sartor, et al., Lancet Oncol. 2014;15(7):738-46.
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1470204514701834?via%3Dihub Return to content - Tombal, et al., ASCO 2019, abstract No. 5007 Return to content
- Shahinian, et al., N Engl J Med. 2005;352(2):154-64. Return to content
- Abrahamsen, et al., BJU Int. 2007;100:749-54. Return to content
- Rachner, et al., Lancet Diabetes Endocrinol. 2018;6(11):901-10. Return to content
- 日本臨床腫瘍学会編集 骨転移診療ガイドライン 2015年版 Return to content
- Saad, et al., J Natl Cancer Inst. 2002;94(19):1458-68. Return to content
- Saad, et al., J Natl Cancer Inst. 2004;96(11):879-82. Return to content
- Fizazi, et al., Lancet. 2011;377(9768):813-22. Return to content
適正使用ガイド
- ゾーフィゴ単剤治療時に骨折リスクは上昇するか?
- 骨折を予防するために、ゾーフィゴ投与時に骨修飾薬の併用は有用か?
- 中等度以上の症候性患者に対して、アビラテロン酢酸エステルとの併用治療を行っても良いか?
- アビラテロン酢酸エステルとの逐次治療において安全性の懸念はあるか?
- アビラテロン酢酸エステル治療後にゾーフィゴ治療を行う際の適切な休薬期間は?
- エンザルタミドとの併用治療は可能か?
- 第一世代抗アンドロゲン薬、ステロイド薬との併用治療は制限されるか?
- 化学療法の前治療歴の有無で有効性・安全性に違いがあるか?
- 無症候性の患者に対するゾーフィゴ単剤治療は可能か?
- 軽度症候性の患者へのゾーフィゴ単剤治療は有用か?
- 骨転移量の少ない患者(EOD1)へのゾーフィゴ単剤治療は制限されるか?
適正使用ガイド
- Q1 ゾーフィゴ単剤治療時に骨折リスクは上昇するか?
- Q2 骨折を予防するために、ゾーフィゴ投与時に骨修飾薬の併用は有用か?
- Q3 中等度以上の症候性患者に対して、アビラテロン酢酸エステルとの併用治療を行っても良いか?
- Q4 アビラテロン酢酸エステルとの逐次治療において安全性の懸念はあるか?
- Q5 アビラテロン酢酸エステル治療後にゾーフィゴ治療を行う際の適切な休薬期間は?
- Q6 エンザルタミドとの併用治療は可能か?
- Q7 第一世代抗アンドロゲン薬、ステロイド薬との併用治療は制限されるか?
- Q8 化学療法の前治療歴の有無で有効性・安全性に違いがあるか?
- Q9 無症候性の患者に対するゾーフィゴ単剤治療は可能か?
- Q10 軽度症候性の患者へのゾーフィゴ単剤治療は有用か?
- Q11 骨転移量の少ない患者(EOD1)へのゾーフィゴ単剤治療は制限されるか?